"虹のたねとり"とは?

 

20代初めのころ、ドイツやイギリスで暮らしているうちに

日本の里山の美しさ(風景、暮らし、家、道具など)にはたと目が覚めて

帰国して、東京の自然食品の会社で商品開発にたずさわり、

生産者や製造者とともに、良いものづくりの和を広げようとがんばっていましたが、

いつしか自分で野菜を育てるようになっていました。

 

川口由一さんの自然農に出会い、和歌山に引っ越して自給自足暮らしをはじめたとき、

種のいのちが自然のままの生命力を宿していたら肥料も農薬も何もいらないということを

目の当たりにしました。

 

それまでは在来固定種の種を買うと、発芽率が低く、育てた苗に虫がついたり、

小さくしか育たなかったり・・・ということがよくありました。自分の育て方が

悪いのかなと思っていましたが、そんな親株からでも種を自家採取してそれを

翌年蒔くと虫もつかず肥料をあげなくても大きく育ってくれました。

 

そして、次の世代では生命力はさらに強くなり、次の世代、次の世代・・・

という風に、種が本来の命の源に近づくほど、よく育つようになりました。

  

種を採る親株が育てられているときに、農薬が使われたり、肥料が使われたりすると

それが種のいのちに記憶として刻まれてしまうのですね。  

たくさん収穫したい、大きく育てたいと、人がどんどん改良していった野菜の生命力は

弱くなっていて、「在来固定種がいいよ」と人にすすめても収量が安定しないからと

肥料をたっぷりあげたという話はよく聞きます。

そして肥料をあげると虫が寄ってきたり、病気の原因になって農薬が必要になってきます。

 

とどまることないこの巡りを、本来のいのちの巡りに戻したい。そう強く思うようになりました。

 

野にあふれる草木のように、自然のままに育った種を採りつづけることで

川や大地は浄化され、野菜はたくましく育ち、そしておのずと人はその恵みをいただける。

 

未来の子どもたちへ、祖先が残してくれた美しい自然と私たちの愛を込めたギフトが残せるように

種をつないでいく未来への架け橋になれたらいいなという思いで、自家採取した種を交換する

コミュニティづくりをはじめました。

 

自分にできる小さなこと。種を運ぶ小鳥のようにあちこちへ広げていきたいと思います。

 

2011年3月

 

虹のたねとり  菊池陽子