種をとりまく真実、知っていますか?

いのちの源である種が、どんな風に作られているか、まずは基礎知識として知ってください。

◎ 固定種

植物が、その土地で繰り返し育つなかで、遺伝子が固定された種のことを"固定種"と呼びます。タネを採って蒔くと、生えてくる子は親と同じ性質のものになります。単一の遺伝子が受け継がれていくので"単種"とも呼ばれます。

 

◎ 在来種・伝統品種・エアルーム

固定種は、種苗会社が開発して1代目であっても、固定種と呼びますが、人から人へ、小動物や虫を介して、そして風に運ばれて、違う土地で育っていくなかで、その土地の気候風土に適応して、変化したり交雑したりして生まれた種が、そこに根付いて繰り返し作り続けられてきたものを"在来種"、"伝統品種"と言います。伝統品種を守ろうという活動は日本でも盛んになってきていますが、保存活動の歴史が長い欧米では、家族や民族伝来の、家宝のようにして採り続けられてきた野菜を、"エアルーム品種"と呼びます。

 

 

 

◎ 交配種(F1)

現在、一般に市販されているのが、この"交配種(F1)"というものです。異品種の交配から生まれるので、"雑種"(英語ではハイブリッド)と呼ばれます。

 

 違う品種の株を二つ掛け合わせると、子は雑種1代となります。1代は、両親の性質のうち優性のほうが現れ、劣性の性質は現れません。両親のどちらよりも丈夫でよく成長し、品質もよくそろい、収量も多くなります。この現象を「雑種強勢」といいます。

 

しかし、親の優れた特性が子に出るのは1代かぎり。そこから種を採っても、親と同じようには育たず、形や性質が不揃いになってしまうため、種苗会社は雑種強勢を利用して毎年同じように交配させた雑種1代を作らなければなりません。そして農家は毎年その種を買うことになります。昭和40年を境にこの交配種が主流となりました。

 

F1が広まった理由には、流通業や小売業にとっては、大きさや形が均一な野菜のほうが、扱い易いということや、農家にとっては、栽培時間の短縮、収量アップ、発芽や収穫時期の均一などがあげられるでしょう。生物は雑種になると、ヘテロシス(雑種強勢)という特性が生まれ、それまで3ヶ月かかって成長したものが、2ヶ月で成長するようになります。農家は、自家採取するために親株をずっと畑にとっておくスペースも必要ありませんし、短期間で違う品種を栽培できるようになるため、大量生産・大量消費の、時代のニーズに合った結果とも言えるでしょう。

 

 

◎ F1づくりの方法

交配種(F1)の優性は母株の雌しべに異品種の雄しべの花粉が付いたときにだけ現れます。

同一品種を交配させたのでは優性が子どもに現れる効果も、ヘテロシス(雑種強勢)が現れる効果もないので、種子企業は膨大なお金をかけて人為的な方法で毎年交配させて種を生産しています。

 

 

野菜には雄と雌の花がひとつの株に異なって咲くもの(キュウリ・トウモロコシ)や、雄株と雌株が異なって育つもの(ほうれん草)、花の中に雄しべと雌しべがあるもの(ナス)などがあって、それぞれの特性にあった方法がとられます。

 

① 除雄  雄しべを人為的に取り除いて自分の花粉で種をつけないようにする  
② 自家不和合性     近親婚を避ける性質を利用して自分の花粉で実らなくする  
③ 雄性不稔  雄しべに健全な花粉がでず自家受粉できない突然変異の株を使って母株に利用する  

 

 

 

◎雄性不稔

現在、主流となっているのは雄性不稔です。雄性不稔はミトコンドリア遺伝子異常で花粉を作れない雄株を使って交配させます。花粉がないので、自家受粉することがなく、人手を雇って蕾に人為的に受粉する手間がかからず、確実に雑種を作ることができます。

 

ですが、雄性不稔とは人間で言えば、精子のミトコンドリア異常から不妊となる男性不妊症、無精子症のことです。もともと子孫を残せない遺伝的に欠陥を持つ植物を、大手種苗メーカーは無理やりに増やして利用しているのです。

 

玉ねぎなど野菜の受粉に大量のミツバチが使われていますが、作物の雄性不稔がミツバチの生殖能力を奪い、ミツバチの大量失踪が起きているのではと懸念する声もあります。

雑誌Newtonが卵子老化問題を取り上げましたが、卵子老化の原因もミトコンドリアの異常が原因だそうです。人間の男性の精子は毎年減少していますが、この雄性不稔だけを人為的に大量生産したことにそれが関係しているのかもしれません。

 

また、別の品種と交配させでできた野菜は、見た目は大根やニンジンの種でも、育つのが大根やニンジンの形でも、大根やニンジンとは言えない遺伝子に変化しています。

 

 

 

◎ 採種後に薬剤処理された種

種を買うと、袋に"消毒済(農薬使用)"と書いてあります。9割以上を輸入にたよっているため、海外から搬送されるとき、虫やカビが付かないように殺虫剤などで処理されていることが多いのです。

日本人の主食であるお米は、そのほとんどが種を蒔くときに種籾を農薬液に浸しています。そして、蒔いた種を鳥についばまれないように、麦や豆類などは、種子コーティングされています。これはピンクなど分かりやすい色付をする義務があるので、見分け方は簡単です。種苗屋さんで働いていた人の話によると、種を袋づめする時に、付いている農薬を吸い込まないようにマスクを付けるのだそうです。 

 

 

◎ 種の親株に使われる農薬・化学肥料

種子が薬剤処理される以前に、種子を実らせる親株も、農薬・化学肥料を使用するのが当たり前になっています。在来固定種をあつかう種苗店の方も、国産の有機栽培、無農薬栽培で採種されたものは皆無だと言っていました。確かに、日本での有機・無農薬栽培の野菜は全体の0.1%しかないのですから当然ですね。

市場に出回らないのですが、自家採取している農家さんに直接いただいたり、種の交換会に参加するのもいいでしょう。

 

 

◎ 失われる種の多様性

固定種は、自然のなかで交雑を繰り返しながら生まれてきたものがほとんどです。交雑して変わった形になったり、突然変異で生まれたものを、何年もかけて種をつなぎながら固定し、それがまた違う土地に渡っていって栽培されると、またその土地で交雑したり気候風土に適応して多様な品種が生まれていきました。

 

ところが、グリーン革命と呼ばれ、「第3世界を飢餓から救おう」という、うたい文句で導入された、多収品種のF1や、遺伝子組み換えの種子が一気に広まり、多様な品種は激減していきました。1900年の始め頃は利用可能だった品種の9割が、もう利用できなくなっている、というデータもあります。そして化学肥料と農薬を多用する必要のある種子を、毎年買わなければならなくなった農家は、先進国の農薬会社や化学肥料会社に依存しなければならなくなりました。

 

 

◎ 画一性による品種のぜい弱性

栽培作物の遺伝的多様性のうち、75%はすでに失われ、毎年2%ずつ失われています。多様性が失われると、遺伝的均一性によって、害虫・病気・気候変動への耐性が弱くなっていきます。例えば、国連の最近の調査で明らかになっているのは、小麦黒さび病が、現存する小麦品種のほとんどに感染しやすいため、世界中に感染が広がっているということです。

 

 

◎ 遺伝子組み換え種子(GM)

遺伝子の自然な交雑ではなく、遺伝子を人工的に操作することで、自然界では起こりえい生命を誕生させる技術で、1996年にアメリカで初めて、除草剤耐性や殺虫毒素を持った細菌の遺伝子を組み込むことで、除草剤を使っても枯れない、虫が食べれば死んでしまうというトウモロコシやダイズ、ナタネが作られました。

日本はそのいずれも90~99%をアメリカなどからの輸入に頼っているので、味噌や醤油、豆腐、納豆や、輸入穀物で飼育されている家畜も、遺伝子組み換え食品を食べて育っていることになります。

現在、日本では食品の全体の5%以上に遺伝子組み換え原料が使われている場合は表示義務があります。(EUでは1%以上)

 

この技術を開発したのは、農薬会社であるモンサントで、除草剤に耐性を持った作物の種子と、自社の除草剤(ラウンドアップ)とをセットで販売しているわけです。

この遺伝子組み換えの一番の問題は、自然界で同属の品種と交雑していき、永久に回収不可能になることです。被害を受けるのは植物だけではなく、ミツバチの大量死なども問題になっています。

管氏が厚生労働省大臣のときに、3品目だけということで遺伝子組み換え種子の輸入が認められ、その後、以下の品種の輸入が認可されるようになっています。 

 

・大豆        ・トウモロコシ
・菜種        ・綿実
・ジャガイモ     ・アルファルファ
・テンサイ      ・パパイヤ

 

また、日本では2009年より遺伝子組み換え作物の栽培が認可され、実験的な栽培が始まっています。

◎ ターミネーター種子

除草剤(ラウンドアップ)に耐性を持つ遺伝子組換えトウモロコシを開発したモンサント社は、さらにその遺伝子を独占するために、新たなる遺伝子組換えを行いました。1998年にアメリカで特許を取ったターミネーター品種です。ターミネーターとは最終兵器のこと。植物に寄生してガン化させるアグロバクテリウム(根頭癌腫病菌)を植物細胞に挿入し、そのトウモロコシの実から種を取ってまくと、発芽した途端、枯れて死んでしまうというものです。

イギリスのゼネカ社でもラット(ドブネズミ)の遺伝子を作物に組み込んで同じようなものを作り、これについてはヴァーミネーター品種と呼ばれています。

 

ターミネーター種子は多くの反響を呼んで、販売にいたりませんでしたが、その後バイエル社、クロップサイエンス社、イギリスのDEFRAも実験していたことが判明しています。

 

 

◎放射線照射

キク科のゴボウは放射線を照射して遺伝子に傷を付けると短くなるということがわかって、短い新品種が生まれたそうです。そしてもう一度放射線照射をしたころ、もっと短くなって、おまけにゴボウ特有のアクまでなくなり、こうしてできた新品種を再度品種登録したのがサラダゴボウです。

 

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◎ 品種登録制度

植物の新品種を開発した人に、一定期間、その新品種を独占的に利用できる権利が与えられる"品種登録制度"が作られました。新品種として登録されている野菜を自家採取して、その種を販売したり誰かにあげたりすると違法になってしまいます。 モンサント社は、品種登録された自社の種子が、ある農園で許可無く栽培されているということで、その農園主を訴えました。風で飛んできたのか、虫が媒介したのか、全く身に覚えのない農園主の主張は退けられ、敗訴になったという事例もあります。

 

 

 

◎ 種の自給率

ほとんどが輸入に頼っている現在、国内の自給率は10%もありません。種を採種する時期が梅雨にあたる日本では長期保存できる種子を採ることが難しいこともありますが、日本の風土に適応してきた種のほうが育てやすく気候にも応じやすいのではないでしょうか。 有機栽培であっても、海外の気候で採種されている種子は、日本での発芽や生育が難しいという話を良く聞きます。

 

 

◎ 種のパッケージから"採種年"が無くなる

昔の種のパッケージには、「採取年月」が表示されていました。今は海外採取がほとんどで、採種してから船で日本へ運ばれて、植物検疫を受けて、試験栽培を行うと、もう日本で種を蒔く時期は過ぎており、国内で採種するものと1年のズレが生じてしまいます。また、種苗会社は一度に大量の種を輸入し、それを3〜4年かけて売ることになるので、採種年が表示されていたのでは困るということで、農林水産省と相談して、「採種年月」ではなく、「最終発芽試験年月」、「発芽率」、「有効期間1年間」というような表示に切り替えてしまったのです。

 

 

◎ Seed Savers

多様な種を守ろうとNPO、慈善団体などの取り組みが世界中で広がっています。

 

● Seed Savers Exchange

  1975年に米国アイオワ州で創設。絶滅に瀕する品種を守り配布する活動をしています。

● ガーデンオーガニック 

  1954年にイギリスで創設。伝統品種など多様な種を一般市民の庭に残そうとする活動。

● Seed Savers Network of Ausutralia 

  1986年にオーストラリアで創設。自家採取ハンドブックを会員向けに配布。

● Association Kokopelli

  1991年にフランスで創設。第三世界での種の保存支援プロジェクトを行う。

 

 

 

 

◎ 種子を独占する巨大企業

スーパーで売られている野菜は、ほぼ100%がF1の種で採れた野菜と言っていいでしょう。「たくさん収穫できる」「短期間で栽培できる」「形や大きさが均一になる」と、グリーン革命とも言われたF1(交配種)ですが、親の良い特性が表れるのは1世代だけなので、農家は毎年種を買わなければなりません。

そして、戦前は枯れ葉剤などの兵器を製造し、戦後は軍需産業で余った薬品を農薬として世界中に販売した巨大企業が、今度は農薬を散布しても枯れない遺伝子組み換え作物を開発しました。これまでに商品化された遺伝子組み換え作物は、すべてモンサント、ジンジェスタ、バイエル、デュポン、ダウの5社によって開発されたもので、この5社は世界の農薬市場の68%近くを占めています。農薬とセットでしか育たないような種が、なぜこれだけ広まっているのかお分かりでしょう。そして、小さな種苗会社を次々に買い占めて、自分たちに優位な法制度を作り、種を独占しようとしています。 

また、種子企業の上位3社だけで、世界の商業種子売上の82%にも相当し、特許取得種子の半分近くを占めています。

(下表2007年NIJPAN提供)

 

種子企業の上位 10社 

1  モンサント(米国)

2  デュポン(米国)              

3  シンジェンスタ(スイス) 

4  グループリマグレイン(フランス)      

5  ランド・オー・レイクス(米国)       

6  KWS(ドイツ)              

7  バイエルクロップサイエンス(ドイツ)      

8  サカタのタネ(日本)            

9  DLFトリフォニウム(デンマーク)     

10 タキイ種苗(日本)             

 

農薬製造企業の上位 10社

1  バイエル(ドイツ)

2  シンジェンスタ(スイス)

3  BASF(ドイツ)

4  ダウ・アグロサイエンス(米国)

5  モンサント(米国)

6  デュポン(米国)

7  マクテシム・アガン(イスラエル)

8  ニューファーム(オーストラリア)

9  住友化学(日本)

10  アリスタライフサイエンス(日本)

 

厚生省が平成23年12月に発表した、国内で安全性審査が完了した作物のリストを見ると

遺伝子組み換え作物の開発者上位は、やはりモンサントが占めているのが分かります。

 

遺伝子組み換え安全性審査を経た作物リスト → こちら

 

◎ モンサントの脅威

モンサント社は、ベトナムで沢山の奇形児を誕生させ、人々が病気で苦しむようになり、大地や水が汚された、枯れ葉剤「オレンジ」と呼ばれるものを開発生産した会社です。

インドでは、この関連の会社による、綿の遺伝子組み換えの種を、農民に強制的に供給できる仕組みを、行政と組んで作り上げ、2009年には天候不順で水がなく、大凶作となり、数万人の規模で、来年の種を買う事も出来ず、税金も納める事も出来ず、家族が食べるものも買えず、みずから命を絶つ悲しい事件がありました。

 

NHK BS による、モンサントの行っている事を伝える番組です。

 

アグリビジネスの巨人モンサントの世界戦略

 

「The world according to Monsanto」ドキュメンタリー映画

◎ モンサントの種を拒否した農民

モンサント社が開発した、ラウンドアップ農薬(日本のホームセンターにもふつうに売っています)を散布するだけで、雑草が生えないだけでなく、土壌、空気、川、海まで壊滅的なダメージを与え、まったく草一本生えることのできない大地を作り出します。

その野菜を食べ続けることは、未来に子供を作る能力が、低下することになることを分かっていて、ハイチの大地震で食べることに困っている人々やアフリカの難民に、人道的支援として、アメリカ政府や慈善団体を通じて大量に供給しています。

ハイチでは、大地震のあとに1万人の農民が抗議のデモを行って、モンサント社からの援助物資のタネ、60トンが燃やされました。ハイチ最大の農民組織の代表は、その理由を「私たちは、毎年自分たちで作物の種を採っています。でもモンサントの種ではそれができません。そして私たちの土地にも適していないのです」と語っています。